MENU

「社長の老後」と会社の将来!経営者のライフプランと事業継続の両立術

――それは、ある60歳の社長の独白から始まりました。

「現役を退いたら、ゆっくり温泉でも巡りたいと思っていたんですよ。でも、いざ退職金を出そうとしたら、会社の資金繰りが真っ赤で……後継者にバトンも渡せない状況でした」

佐藤 真由美

この言葉、他人事だと思いますか?
それとも、どこか自分の未来に重なる気がするでしょうか?

私は佐藤真由美。
銀行で10年融資審査を担当し、コンサルで5年、中小企業の財務改善に奔走してきました。
独立してからの9年間で見てきたのは、資金繰りが老後と経営、どちらかを必ず圧迫するという現実です。

中小企業における「社長のライフプラン」と「会社の事業承継」は、車の両輪です。
片方だけ走っていては、いつか確実に横転します。
そしてその“転倒”は、キャッシュの枯渇=企業の失血死という形で現れるのです。

「キャッシュは企業の血液」——ライフプランと財務計画を一体で考える時代へ

私の持論ですが、キャッシュフローは企業の血液です。
いくら利益が出ていても、資金が滞れば事業は止まります。
それは社長個人の生活設計においても同様で、「引退したときにいくら使えるか」を逆算せずに経営を続けると、将来必ずツケを払うことになります。

たとえば、老後の年間生活費を300万円、医療費を平均176万円(男性)、さらに余暇費用や家のメンテナンスなどを考慮すると、65歳から20年間の必要資金は最低でも6,000万円超
これに対して、現役中にどこまで退職金・私的年金・資産運用で準備できるか?
さらに、会社の運転資金は減らさずに後継者にも安心して渡せる状態をどう作るか?

――この二重の課題を解決するためには、「経営者個人のライフプラン」と「企業財務の戦略設計」を切り離さず、同時進行で描くことが必要不可欠です。

本記事で解説するのは、“60歳までにやるべきこと”の全体像

本記事では、私が数百社の資金繰りを見てきた経験と、最新の公的制度・税制・金融商品を踏まえ、次のような視点で徹底解説します。

  • 老後資金シミュレーションのやり方:Excelで作る“5ステップモデル”と具体数値
  • 退職金準備と運転資金のバランス法:中退共や確定拠出年金の活用例
  • 後継者育成と融資戦略の連動:日本政策金融公庫の支援制度と条件
  • 経営者保証・自社株評価・相続対策:税制と資金繰りを両立する知恵
  • 副業・投資によるリスク分散法:NISA・不動産小口投資・企業シナジー戦略
  • 行動計画と専門家連携:60歳までのチェックリストと定期レビュー体制

これらを「見て」「考えて」「行動できる」よう、ストーリー仕立てで展開します。

経営者であるあなた自身と、あなたの会社の両方が“潤う未来”を迎えるために。
この記事がその第一歩となることを願って——。

🔄 明日の資金繰りを今日解決する最短ルート

┗ 最短3時間での資金調達を実現
┗ キャッシュフロー改善に特化した専門提案
┗ 経営危機を未然に防ぐ資金戦略サポート

【売掛金を即現金化】ファクタリングで資金繰りの不安を解消

目次

社長のライフプラン策定が企業存続に直結する理由

老後資金シミュレーションの基本フレーム

あなたは、ご自身の老後資金を「具体的な数字」で把握していますか?
経営者の多くは、「退職時にまとまった退職金を受け取れば大丈夫だろう」と考えがちですが、これは非常に危うい発想です。

企業の財務管理をしてきた立場から言わせていただくと、“感覚”ではなく“見える化”が老後の安心を支えます。

そこで、私が多くのクライアントに提供してきたのが、Excelで作る“5ステップモデル”です。
これは、個人としてのキャッシュフローを20年先まで視覚化するためのフレームワークです。

【Excelで作る老後資金シミュレーション:5ステップ】

1. 現在の生活費を年間ベースで洗い出す

  • 例:食費・光熱費・通信費・交通費・交際費等
  • 標準的な夫婦世帯の場合、年間330万円が目安(家計調査より)

2. 医療費・介護費を上乗せする

  • 公的保険制度があるとはいえ、実費負担は年平均176万円(男性)〜196万円(女性)

3. 余暇・趣味・旅行などの費用を設定

  • 年間30〜50万円程度の“人生の質”を高める支出も忘れずに

4. 所得(年金・資産運用・配当等)を算出

  • 公的年金だけでは月14〜15万円が平均(自営業者はさらに低下)
  • 不足額を退職金や私的年金でどう補うかが焦点

5. 20年間のキャッシュフロー表を作成する

  • 必要資金総額を算出すると、6,000万円〜7,000万円が必要になるケースが大半

このように、老後に必要な「年間資金」と「準備できる資産」の差を明らかにすることで、

・会社からいくら退職金を引き出せるのか?
・事業資金に手を付けずに済むのか?
・資産運用や保険の最適バランスは?

といった問いに、定量的な根拠をもって答えが出せるようになります

個人資産と会社資産を切り分ける3つの視点

老後資金を考えるうえで、最も避けるべきは「会社のお金=自分のお金」と錯覚することです。
これは税務リスク、経営リスクの両面で致命的な落とし穴となります。

佐藤 真由美

ここでは、資金の分離を実践するための3つの視点をお伝えします。

① 名義の明確化

会社名義の預金口座・不動産・車両・保険を、代表者個人が「使っているから自分のもの」と認識しているケースは非常に多いです。
しかし、税務署・金融機関は、「登記上・契約上の名義」で厳密に判断します。

例えば、会社保有の生命保険の解約返戻金を引退時に使おうとした経営者が、課税対象とされ数百万円の追徴を受けた事例もあります。

② 税負担のコントロール

会社から個人に資金を移す場合、役員報酬・配当・退職金という3つのルートがあります。
それぞれに所得区分・税率が異なり、最も節税効果が高いのは退職慰労金(最大3,000万円まで優遇)です。

しかし、法人側に資金がなければ支払えず、結果として“会社資金の私的流用”というグレーゾーン行為に走ってしまう。
これを防ぐには、税理士と事前に「出口設計図」を作成しておく必要があります。

③ リスク源泉の明確化

会社資産と個人資産が曖昧だと、どちらかが債務不履行に陥った場合に、もう一方が巻き込まれます。
特に注意すべきは、経営者保証の個人連帯債務と、役員貸付金・借入金です。

会社に貸しているつもりの資金が、実は税務上「回収不能の贈与」と認定されることもあります。
つまり、名義・税務・保証の3点セットで、「個」と「社」の境界線を明確に引くことが、安心して引退できる基盤作りにつながるのです。

事業継続のための資金繰り戦略

経営者退職金積立と運転資金のバランス

企業の資金繰りとは、まさに血液の流れそのものです。
老後資金の準備を優先しすぎれば、事業の運転資金が枯渇する。
逆に、会社の資金を守るあまり退職金の準備を怠れば、社長の引退後の生活が危機に陥る。

このジレンマを解消する鍵は、「資金用途別に分離したキャッシュフローモデル」を構築することにあります。
ここで活用すべき代表的な制度が、以下の2つです。

【退職金準備の王道:中小企業退職金共済(中退共)】

  • 月額掛金:5,000〜30,000円(1,000円単位)
  • 掛金は全額損金算入が可能(法人税対策にも効果的)
  • 10年以上の継続加入で、退職時には相応の一時金が受け取れる

たとえば、月2万円×30年=総額720万円+運用利息となり、最低限の老後資金として有効です。
これを会社が支払っておき、個人資産として老後に移行するという明確な流れがつくれます。

【老後と企業双方に利く:企業型確定拠出年金(iDeCo・401k)】

  • 会社が制度導入すれば、役員・従業員ともに毎月積立可能
  • 掛金の全額所得控除、運用益非課税、受取時の控除もあり
  • 個人口座で管理され、会社資産とは明確に切り分けられる

特に役員1人企業でも導入可能な「小規模企業共済」や「個人型iDeCo」は、老後資金の柱になります。

“血流図”で見る理想のキャッシュフロー設計

ここで、会社と社長個人の資金フローをビジュアル的に整理してみましょう。

【会社のキャッシュフロー】
営業収入
   ↓
運転資金(仕入・人件費・販管費)→ 金融機関返済
   ↓
余剰資金 → 退職金準備(中退共・保険など)

【社長個人のキャッシュフロー】
退職金・iDeCo受取
   ↓
生活費・医療費・余暇費
   ↓
残資産の資産運用(NISA等)

このように、会社内での資金積立と、個人への明確な資金移動を計画的に行うことが、経営者としての「引き際の美学」を支えるのです。

金融機関との対話:後継者承継向け融資の活用

「退職金を支払いたいが、会社に十分なキャッシュがない」
「後継者が買収するにも資金が足りない」

こうしたとき、頼れるのが日本政策金融公庫の『事業承継・集約・活性化支援資金』です。

【制度概要(2025年5月現在)】

  • 資金使途:株式・事業用資産の取得(自社株買い / M&A に伴う持分取得を含む)、設備投資、長期運転資金 など
  • 設備資金:最長20年(据置5年以内)
  • 運転資金:最長10年(据置5年以内)
  • 利率:中小企業事業・特別利率 1(5 年以内):年 1.35 %〈2025 年 5 月 1 日現在〉

ポイントは、「退職慰労金や自社株買収」にも使える点です。
つまり、会社が後継者に譲渡する際の資金として、返済可能な形で準備できるのです。

金融機関との“物語共有”が鍵

この種の融資は、単なる資金調達ではなく、「後継者とともに描く未来像」が問われます。
経営計画書に加え、事業承継計画・役割分担・財務指標の改善計画をセットで提出することで、
金融機関も“企業の次章”に投資するパートナーとして動いてくれるのです。

私の支援先でも、後継者が40代のときにこの融資を活用し、社長退任と同時に株式を買い取ることで、
現経営陣が丸ごと“安心して”世代交代を成功させた事例がありました。

経営者保証ガイドラインと相続・承継対策

自社株評価と納税資金の確保

事業承継の現場で最も頭を悩ませるのが、「株式の相続」と「納税資金の確保」です。
特に中小企業では、株式の評価額が経営実態以上に膨らむケースが多く、後継者にとって重い税負担となることが少なくありません。

佐藤 真由美

この問題に備えるには、株価評価の基礎知識と税務対策の視点を早期に持つことが極めて重要です。

【STEP1】自社株評価の簡易的な把握方法

法人税法上の自社株評価には「類似業種比準方式」「純資産価額方式」「配当還元方式」の3つがありますが、
実務で多く活用されるのは以下の通りです。

  • 配当還元価額方式(評価額を抑えるための方法)
    • 計算式:年間配当金 × 100 / 評価利回り(例:6%)
    • 配当が少なければ評価額も低く抑えられるため、相続税を下げる効果あり
  • 純資産方式(相続税評価では基本)
    • 資産から負債を差し引いた簿価がベース
    • 定期的な減損処理・在庫評価の見直しでコントロール可能

特に、株価が過大に評価されやすい“キャッシュリッチ企業”では、適切な資産の組替えや保険・退職金制度の活用で調整が必要です。

【STEP2】納税資金の準備方法

評価が高くなってしまった場合でも、後継者の負担を軽減する手段があります。

  • 法人版事業承継税制(特例措置)
    • 2026年3月31日までの「特例承継計画」の提出が前提
    • 対象株式の相続税・贈与税が100%猶予される(要5〜10年の継続雇用等)
  • 金融機関との協調による納税資金融資
    • 税理士・金融機関・保証協会との連携があれば、株式移転と同時に資金確保が可能
  • 事業保険による納税準備資金の積立
    • 養老保険や逓増定期保険などで、解約返戻金を納税に充当するスキームも有効

重要なのは、「社長が元気なうちに資金繰り表をベースに納税資金をシミュレーションしておくこと」です。
後継者に納税の“爆弾”を残さない。これも経営者としての責任なのです。

種類株・持株会スキームの活用法

事業承継において、「株式の所有」と「議決権の行使」は、必ずしも同一人物でなくてもかまいません。
この柔軟性を活かすのが、種類株式制度従業員持株会制度です。

【種類株式:議決権と配当を分離する】

例えば、以下のような設定が可能です。

  • 【無議決権株式】:後継者以外の親族に配当だけを与えるが、経営権は移さない
  • 【黄金株】:重要事項にだけ否決権を持つ「拒否権付き株式」で、急な支配権移動を防ぐ

これにより、財産の分配と経営権のコントロールを両立することが可能となります。

【従業員持株会(ESOP型)】:会社の“帰属意識”を高める制度

  • 役員・従業員による株式購入を通じて、会社のオーナー意識を育てる
  • 退任後も議決権を一部保持しながら、段階的に承継する仕組みとして使える

実際に、関東のある製造業では、社長が50代後半から種類株と従業員持株会を併用し、
10年間かけて株式の55%を社員に移行、残りは次期社長に集中させる形で、トラブルなく経営権移譲を完了しました。

後継者育成と組織体制整備

事業承継計画書の作り方

事業承継で最大のリスクは、「人」が継がれないことです。
財務や設備は目に見えますが、「経営の意志」「理念」「判断のクセ」は可視化されにくく、属人化しやすい。
この“経営の空洞化”を防ぐために必要なのが、事業承継計画書の策定です。

【中小企業庁ひな形に基づく基本構成】

以下は、中小企業庁が推奨する「事業承継計画書」の代表的な構成です。
すべてを完璧に整える必要はありませんが、「経営の引継ぎが言語化された状態」であることが肝要です。

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃ 事業承継計画書の構成要素 ┃
┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫
┃ • 経営理念・事業ビジョンの明文化         ┃
┃ • 現社長・後継者の役割分担スケジュール     ┃
┃ • 経営課題と今後の戦略(SWOT分析など)    ┃
┃ • 財務状況と資金計画(納税・退職金等)     ┃
┃ • 人材・ノウハウの引継ぎ方法               ┃
┃ • ステークホルダー(取引先・金融機関)対応┃
┃ • 外部専門家の関与スキーム                 ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

【ポイント】“誰が、いつ、どのように”を明確にする

多くの中小企業がつまずくのは、「そのうち何とかなるだろう」という属人的な楽観です。
しかし事業承継は、経営者個人の決断と行動の積み重ねがカギ。
だからこそ、「フェーズごとの責任者と期限」をガントチャート形式で可視化することが極めて有効です。

例:

【50歳】後継者候補の明確化  
【52歳】社内業務のOJT開始  
【55歳】経営数値報告の任せ始め  
【58歳】株式移転・代表交代準備  
【60歳】退任・承継完了

このように逆算設計を行うことで、突発的な引退や病気にも耐える事業基盤が整います。

人材・ノウハウの引き継ぎチェックリスト

経営者の“頭の中”を、会社の資産として見える形にすること
これが、承継における最も重要なステップのひとつです。

【属人化を防ぐためのドキュメント整備】

以下は、私が支援先で実際に使っている「引継ぎチェックリスト」の一部です。

✅ 財務・会計
- 資金繰り表の運用ルール
- 取引銀行の支店・担当者一覧
- 月次試算表の読み方指導内容

✅ 営業・顧客管理
- 主要顧客別の販売条件
- 見積テンプレート・提案書フォーマット
- CRMツールのログイン情報と運用マニュアル

✅ 総務・人事
- 就業規則の運用実態
- 評価制度と昇給ルール
- 勤怠管理ツールの使用方法

✅ 経営判断
- 価格交渉や仕入判断の基準
- トラブル対応マニュアル
佐藤 真由美

こうした情報を紙ベースでもクラウドでもよいので“棚卸し”しておくことが、後継者の心理的負担を減らします。

【SaaSツールの活用で「資産化」する】

さらに、情報の属人化を防ぐためには、SaaS(クラウドサービス)活用が鍵です。
以下は特に中小企業での導入実績が多い例です:

  • kintone(キントーン):業務プロセスとコミュニケーションの可視化
  • Money Forward クラウド会計:日次資金管理と経営分析
  • Google Workspace / Notion:マニュアル・チェックリストの共有基盤

これらを使えば、知識を“引き継ぎ可能な形”に変換することができるのです。

副業・資産運用でリスク分散

「会社だけに頼る時代は終わった」——これは、単なる流行り文句ではなく、経営者自身の老後設計に直結する現実的な課題です。
会社の利益が上がっていても、将来の社会保障制度が不透明な今、社長自身の資産運用や副収入源を持つことは、企業の安定にもつながります。

社長個人の資産形成オプション

会社のお金とは別に、自分の資産をどう増やしていくか。
その手段として、現在主流の「3つの選択肢」を比較していきましょう。

【1】iDeCo(個人型確定拠出年金)

  • 掛金全額が所得控除(節税効果あり)
  • 運用益非課税、受取時にも税控除あり
  • 60歳まで引き出せないが、長期の年金資産形成には最適

掛金上限(役員・自営業者の場合)

  • 月額:68,000円(年816,000円)

📌 60歳までロックされるデメリットも考慮し、「引退後の生活費」として活用

【2】新NISA(2024年からの制度改正)

  • 年間360万円までの非課税投資枠
     ┗ つみたて投資枠:120万円/成長投資枠:240万円
  • 非課税保有限度額:総額1,800万円(うち成長投資枠1,200万円まで)
  • 株式・ETF・投資信託に幅広く対応

💡 中長期での資産形成に加え、退任後も運用しながら資産を減らさず生活できるモデルを構築可能。

【3】不動産小口投資・REIT(上場不動産投資信託)

  • 数万円単位で不動産収益に参加可能
  • 分配金でインカムゲインを得られる
  • 管理不要・換金性も高い(REITは証券市場で売買可能)

⚠ 価格変動リスクや賃料収入の不安定さもあるため、分散投資が必須

投資別リスク比較と期待利回り

┏━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━┓
┃ 投資タイプ              ┃ 想定年利回り   ┃ リスクレベル        ┃
┣━━━━━━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━━━━┫
┃ iDeCo(定期型)         ┃ 1.0〜2.0%      ┃ 低(元本確保型あり)┃
┃ iDeCo(投資型)         ┃ 3.0〜5.0%      ┃ 中(商品により変動)┃
┃ 新NISA(株式投信型)    ┃ 4.0〜6.0%      ┃ 中〜高               ┃
┃ 不動産小口投資・REIT     ┃ 3.5〜5.5%      ┃ 中〜高(市況依存)  ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━┻━━━━━━━━━━┻━━━━━━━━━━━━┛

このように、短期資金は安全性重視、老後資金は成長性重視といった使い分けがポイントになります。

企業の新規事業投資とリスク管理

経営者が「会社の外」で資産形成を行う一方で、会社自体も“第2の柱”を育てる必要があります。
新規事業への投資がその代表格ですが、問題は「どこまで資金を投じるか」「どの時点で撤退するか」。

ここで有効な手法が、DCF(割引キャッシュフロー)を使った簡易的シナジー評価です。

【DCFの簡易フレーム】

未来の利益予測 ÷(1+割引率)^年数 = 現在価値

例:年間キャッシュフロー300万円/割引率5%/5年間

→ 現在価値:
= 300万÷1.05^1 + 300万÷1.05^2 + … + 300万÷1.05^5
≒ 総額1,300〜1,350万円

この数値と、初期投資額+維持費用を比較することで、新規事業の投資妥当性を定量評価できます。

さらに、撤退判断については以下のルールを明文化しておきましょう。

  • 黒字転換までの年数を3年以内と設定
  • 赤字幅が予算の2倍を超えたら再精査
  • 売上成長率が5期連続で下振れしたら撤退検討

このように、「社長個人の投資」と「会社の投資」は、どちらもリスクヘッジであり、
両者を切り離して設計することで、企業と個人が互いに支え合える関係になります。

行動計画:60歳までのロードマップとチェックリスト

いくら知識を得ても、行動に移さなければ現実は変わりません。
本セクションでは、これまで解説してきた「ライフプランと事業継続」を実現するために、経営者が実際にいつ・何をするべきかを時系列で整理します。

佐藤 真由美

さらに、計画を“動かす”体制=専門家チームの活用法もあわせてご紹介します。

フェーズ別アクションプラン【年齢マイルストーンで設計】

老後資金・事業承継・後継者育成・税務対策を“同時進行”で進めるには、フェーズ分けが不可欠です。
以下の年齢別チェックポイントは、実際のクライアント支援現場でも使用している実践的なフォーマットです。

■ 45歳:意識転換と情報整理の年

  • 家計と会社のキャッシュフローを分離して見える化
  • iDeCo・NISAの積立を開始(節税しながら資産形成)
  • 退職金制度(中退共など)の導入を検討
  • 後継者候補の社内外リストアップ

■ 50歳:計画の土台作り

  • 事業承継計画書の初版を作成(財務・人材・経営理念の引継ぎ設計)
  • 税理士と連携し、自社株評価と納税額シミュレーション
  • 中小企業庁の「特例承継計画」提出を検討(税制優遇)
  • 生命保険や種類株での分散スキームを構築

■ 55歳:バトンリレーの準備開始

  • 後継者への権限移譲を段階的に実行(財務報告、会議主導など)
  • 金融機関と「承継後の支援」について相談を開始
  • 不採算事業の整理、主力商品の選別を完了
  • 退職慰労金積立のシミュレーション(キャッシュフロー連動)

■ 60歳:退任と資産の再設計

  • 株式譲渡/役職引継ぎの正式実行
  • 退職金の受取と運用方針の決定(NISA、年金、保険など)
  • 個人と法人の資産の再分別(名義・税区分を再整理)
  • 定期レビュー体制の継続を後継者と共有

定期レビュー&専門家チームの組成

経営者の引退プランは、一度立てたら終わりではありません。
環境変化(税制改正、事業構造変化、人材流出等)に応じて、半年〜1年に一度の見直しが必要です。
そのためには、外部専門家とのチーム作りが有効です。

【推奨されるチーム構成】

  • 税理士:株価評価、贈与・相続対策、節税設計
  • 社労士:退職金・年金制度の整備、雇用契約の見直し
  • 金融機関担当者:承継融資や資金調達のサポート
  • 経営コンサルタント:後継者教育、KPI設計、SaaS導入支援
  • 法務専門家(弁護士 or 行政書士):種類株式、契約書整備、遺言・民事信託

📌 アクションの継続が、老後と会社の未来を守る最大の施策です。

「うちの会社はまだ早い」と感じていても、“今”こそ最も早いタイミングであり、すべての企業にとって、60歳は“通過点”ではなく“戦略的ゴール”として捉えるべき時代なのです。

まとめ

会社を育ててきた年月と同じくらい、あなた自身の未来も大切にできていますか?

本記事でお伝えしてきたように、社長の老後と会社の将来は、決して相反するテーマではありません。
むしろ、「ライフプラン × 事業承継」を一体として設計することで、経営者の安心と企業の成長を同時に実現することが可能になります。

【本記事のまとめポイント】

  • 老後資金の必要額は6,000〜7,000万円が現実的ライン
  • iDeCo・NISA・中退共などを活用し、会社外でも資産形成を進める
  • 株価評価や税負担をコントロールするには、早期の納税資金準備とスキーム設計が必要
  • 承継は「人の問題」であり、理念・ノウハウの棚卸しと育成がカギ
  • 金融機関との対話、事業承継税制、融資制度を駆使して、トラブルなき世代交代を設計
  • 45歳〜60歳までのフェーズで計画的に行動すれば、会社と社長の両方が潤う未来が見えてくる
佐藤 真由美

最後にお伝えしたいのは、「キャッシュは企業の血液」という私の信念です。

老後の不安や事業の行き詰まりは、突然現れるわけではありません。
それは、小さな血流の滞り——たとえば、見えない名義の曖昧さ、資金の流用、後継者教育の遅れ——から始まり、
やがて“経営のショック死”という形で噴き出します。

だからこそ、「60歳を迎える前に、血流を整える」。
これが、私が何百社という企業支援で痛感してきた、たった一つの真理です。

🌱 今、始めるべきこと

  • Excelで「老後資金シミュレーション」を作ってみましょう
  • 中退共・NISA・iDeCoの掛金設定を見直しましょう
  • 金融機関・税理士と承継・退職の計画を共有しましょう

そして何より、「会社の未来」を、あなた自身の未来と同じくらい大切にしてください。

🔄 明日の資金繰りを今日解決する最短ルート

┗ 最短3時間での資金調達を実現
┗ キャッシュフロー改善に特化した専門提案
┗ 経営危機を未然に防ぐ資金戦略サポート

【売掛金を即現金化】ファクタリングで資金繰りの不安を解消

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

はじめまして。「資金繰りベスト」ライターの佐藤真由美と申します。埼玉県さいたま市在住の45歳、中小企業の資金繰りと経営管理を専門とするファイナンシャルアドバイザー兼ライターです。

目次