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経営者保証ガイドライン改正で何が変わる?保証なしで融資を受けるための新常識【元銀行員が解説】

会社の借入のために、経営者であるあなたの個人資産までリスクに晒されていませんか?

「事業に失敗したら家族を路頭に迷わせてしまう…」

そんな不安から、思い切った挑戦を躊躇している経営者は少なくありません。
しかし、もうその心配は不要かもしれません。近年、「経営者保証に関するガイドライン」が大きく改正され、国を挙げて経営者保証に依存しない融資慣行への転換が進んでいます。

私は大手銀行で融資審査を担当し、その後、経営コンサルタントとして数多くの中小企業の財務改善を支援してきました。その経験から断言できるのは、経営者保証を外すことは、もはや「夢物語」ではなく「現実的な選択肢」になったということです。

佐藤 真由美

実際、2024年度上期には、新規融資の実に52.6%が経営者保証なしで実行されています。

本記事では、この改正の核心と、経営者保証なしで融資を受けるための「新常識」を徹底解説します。
金融機関が本当に見ているポイントから、明日からできる準備まで、あなたの会社と家族の未来を守るための実践的なノウハウをお伝えします。

【この記事の結論】経営者保証なしの融資は「現実的な選択肢」です

「経営者保証ガイドライン」の改正により、社長個人が会社の借入を保証する必要のない融資が当たり前になりつつあります。特に重要な「経営者保証改革プログラム」のポイントと、保証なし融資を実現するための必須要件は以下の通りです。

  • ポイント①:保証料上乗せで保証なしを選択可能に
    • 一定の財務要件等を満たせば、+0.25%〜の保証料で経営者保証を外せる新制度が開始されました。
  • ポイント②:スタートアップ融資は原則「保証不要」
    • 創業5年未満の企業向けに、最大3,500万円まで担保・保証人ともに不要な制度があります。
  • ポイント③:金融機関の「説明義務」が強化
    • 金融機関は保証を求める理由や、解除の条件を具体的に説明する義務を負うようになりました。
  • 実現の必須要件:「公私混同の解消」が最重要
    • 保証解除には「法人と個人の資産分離」「事業収益での返済能力」「経営の透明性」の3つが求められますが、特に「役員貸付金がない」など公私混同の解消が第一歩です。

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目次

そもそも経営者保証とは?今なぜ見直されているのか

経営者保証の基本と金融機関が求める理由

経営者保証とは、会社が金融機関から融資を受ける際に、経営者個人が連帯保証人となり、会社が返済できなくなった場合に個人の資産で返済する責任を負う仕組みです。

私が銀行員時代、融資審査の現場で経営者保証を求める理由は主に2つありました。
1つは「信用力の補完」です。

特に中小企業は、大企業に比べて財務基盤が脆弱なケースが多く、会社の資産や収益力だけでは返済能力が不十分と判断される場合があります。そこで、経営者個人の資産を担保とすることで、貸し倒れリスクを軽減するのです。

もう1つは「経営への規律付け」です。経営者が個人資産を賭けることで、安易な経営判断を抑制し、真剣に事業運営に取り組むインセンティブが働くという考え方です。実際、審査会議では「社長自身が覚悟を持っているか」という点が重視されていました。

しかし、この「常識」が今、大きく揺らいでいます。

なぜ「経営者保証」が事業成長の足かせになるのか

経営者保証には、確かに一定の合理性があります。しかし、その弊害も無視できません。

経営者保証には、経営への規律付けや資金調達の円滑化に寄与する面がある一方、経営者による思い切った事業展開や早期の事業再生、円滑な事業承継を妨げる要因となっているという指摘もあります。

私がコンサルタントとして支援した企業の中には、新規事業への投資機会があったにもかかわらず、「これ以上、個人保証を増やしたくない」という理由で断念したケースがありました。
また、後継者候補が「親の借金を背負いたくない」と事業承継を拒否し、結果的に廃業を選んだ企業も見てきました。

経営者保証は、経営者個人に過度なプレッシャーを与え、「挑戦」の芽を摘んでしまうのです。
こうした状況が、日本経済全体の活力を奪っているという危機感が、今回の改革の原動力となっています。

【2024年最新】経営者保証改革プログラムの3つの重要改正ポイント

2022年12月、金融庁・財務省・経済産業省が連携して「経営者保証改革プログラム」を策定しました。
このプログラムに基づき、2023年から2024年にかけて、経営者保証を巡る環境は劇的に変化しています。
ここでは、特に重要な3つの改正ポイントを解説します。

ポイント1:保証料上乗せで「経営者保証なし」を選択可能に

2024年3月15日から、信用保証協会の保証付き融資において、「事業者選択型経営者保証非提供制度」が開始されました。これは、一定の要件を満たせば、保証料を少し上乗せするだけで経営者保証を不要にできるという画期的な制度です。

具体的には、以下の5つの要件をすべて満たす必要があります。

No.要件具体的な内容
1決算書の提出過去2年間、金融機関に決算書等を提出していること。
2法人と個人の分離役員貸付金などがなく、役員報酬が社会通念上、妥当な範囲内であること。
3財務健全性「債務超過でない」または「直近2期の減価償却前経常利益が連続で赤字でない」のいずれかを満たすこと。
4誓約書の提出上記1と2の要件を今後も維持することを誓約する書面を提出すること。
5事業者の希望中小企業者自身が、保証料の上乗せを許容し、保証を提供しないことを希望していること。

上乗せされる保証料率は、財務状況によって以下の2段階に分かれます。

  • 財務健全性の両方を満たす場合: +0.25%
  • 財務健全性の片方のみ満たす場合: +0.45%

保証限度額は8,000万円です。このわずかなコストで、万が一の恐怖から解放されるのであれば、検討する価値は十分にあるでしょう。

ポイント2:スタートアップ・創業融資での保証原則不要の流れ

起業関心層のおよそ8割が「借金や個人保証を抱えること」を懸念しているという調査結果を受け、2023年3月15日から「スタートアップ創出促進保証」制度が開始されました。

この制度は、創業予定者や創業後5年未満の法人を対象としており、以下の特徴があります。

  • 保証限度額: 3,500万円
  • 保証料: 通常の料率に+0.2%
  • 自己資金: 創業資金総額の1/10以上(税務申告1期未終了の場合)
  • 担保・保証人: ともに不要

特筆すべきは、経営者保証だけでなく、担保も不要である点です。創業期は実績がないため、融資のハードルが最も高い時期ですが、この制度は「事業のアイデアと情熱」を評価し、未来に投資してくれる仕組みと言えます。

ただし、3年目と5年目に中小企業活性化協議会による「ガバナンス体制の整備に関するチェックシート」に基づいた確認および助言を受けることが義務付けられており、企業としての成長を促す仕組みも組み込まれています。

ポイント3:金融機関の説明義務と記録義務の強化

2023年4月から、金融機関が経営者保証を求める際に、その必要性や解除の可能性について具体的に説明し、内容を記録することが義務化されました。(出典: 金融庁. (2024 ). 経営者保証徴求時における金融機関の説明プロセスやモニタリング等に係る事例集.

佐藤 真由美

これは非常に重要な変化です。従来、金融機関が「保証が必要です」と言えば、経営者は受け入れるしかありませんでした。しかし今は、金融機関側に説明責任があり、その内容を金融庁に報告する義務もあります。

私が銀行員だった頃は、正直なところ、保証を求める理由を詳細に説明することは稀でした。しかし今は、「なぜ保証が必要なのか」「どの要件を満たせば保証を外せるのか」を明確に伝えなければなりません。これにより、経営者は対等な立場で交渉しやすくなり、改善に向けた具体的な道筋が見えるようになったのです。

保証なし融資を実現する!金融機関が評価する3つの必須要件

経営者保証を外すためには、「経営者保証に関するガイドライン」で示されている3つの要件を満たすことが基本となります。ここでは、元銀行員の視点から、金融機関が実際にどこを見ているのか、具体的に解説します。

要件1:法人と個人の明確な分離(公私混同の解消)

「会社の資金と社長個人の資金が明確に分けられているか」

これが最も基本的、かつ最も重要な要件です。具体的には、以下のような状態を指します。

  • 会社から経営者個人への役員貸付金や仮払金がないこと
  • 経営者個人の生活費を会社の経費で支払っていないこと
  • 役員報酬、賞与、配当等が社会通念上相当と認められる額であること

私が審査担当だった頃、決算書を見て真っ先にチェックするのが「役員貸付金」の項目でした。ここに多額の金額が計上されていると、「公私混同している」と判断され、保証解除の交渉は非常に難しくなります。

逆に言えば、この項目をゼロにすることが、保証解除への第一歩です。既に役員貸付金がある場合は、返済計画を立て、段階的に解消していく姿勢を示すことが重要です。

要件2:会社の収益力による返済能力(財務基盤の強化)

「経営者個人の資産に頼らず、事業のキャッシュフローだけで返済可能か」

これが2つ目の要件です。具体的には、以下のいずれかを満たすことが目安となります。

  • 直近の決算期において債務超過となっていないこと(純資産≧0)
  • 直近2期の決算において減価償却前経常利益が連続して赤字でないこと

「減価償却前経常利益」とは、経常利益に減価償却費を足し戻した金額です。これは、実際のキャッシュフローに近い指標として、金融機関が重視します。

また、より詳細な分析では、「EBITDA有利子負債倍率」という指標も使われます。これは、有利子負債(銀行借入など)がEBITDA(税引前利益+支払利息+減価償却費)の何倍あるかを示すもので、10倍以下が一つの目安とされています。

自社で簡単に計算できますので、一度試算してみることをお勧めします。

要件3:信頼される経営の透明性(タイムリーな情報開示)

「財務情報を適時適切に金融機関に開示しているか」

これが3つ目の要件です。具体的には、以下のような対応が求められます。

  • 決算書を毎年、遅滞なく提出していること
  • 金融機関から求められた場合、試算表(月次または四半期)を提出できること
  • 事業計画書を作成し、定期的に進捗を報告していること

私が審査担当だった頃、最も信頼できると感じたのは、税理士や公認会計士など、外部専門家のチェックを受けた資料を提出してくる企業でした。第三者の目が入ることで、数字の信頼性が格段に高まるからです。

「うちは小さな会社だから、そこまでやらなくても…」と思われるかもしれません。しかし、この「透明性」こそが、金融機関との信頼関係を築く最も確実な方法なのです。

【元銀行員が直伝】経営者保証を解除するための実践的3ステップ

ここまで、制度の概要と要件を解説してきました。では、実際に経営者保証を解除するには、何から始めればよいのでしょうか。私の銀行員とコンサルタントの経験を踏まえ、実践的な3ステップをお伝えします。

ステップ1:現状把握と課題の洗い出し

まずは、自社の現状が前述の3つの要件をどの程度満たしているか、自己診断することから始めましょう。

【セルフチェックリスト】

  • [ ] 役員貸付金・仮払金はゼロか?
  • [ ] 役員報酬は適正な範囲内か?
  • [ ] 直近決算で債務超過になっていないか?
  • [ ] 直近2期の減価償却前経常利益は黒字か?
  • [ ] 決算書を毎年、遅滞なく金融機関に提出しているか?
  • [ ] 試算表を定期的に作成しているか?
  • [ ] 事業計画書を作成しているか?

このチェックリストで、どの項目が満たせていないかを明確にしてください。それが、あなたの会社の「課題」です。

ステップ2:改善計画の策定と実行

洗い出した課題に対して、具体的な改善計画を立てます。

【改善計画の例】

課題短期目標(6ヶ月以内)中期目標(1〜2年以内)
役員貸付金500万円がある毎月50万円ずつ返済し、10ヶ月で解消
減価償却前経常利益が赤字コスト削減で月次黒字化を目指す年間で300万円の黒字を達成
試算表を作成していない税理士に依頼し、月次試算表の作成を開始毎月15日までに前月分を完成させる体制を構築

重要なのは、数値目標と期限を明確にすることです。「頑張ります」では金融機関は評価してくれません。「いつまでに、何を、どれだけ改善するか」を具体的に示すことで、初めて信頼を得られるのです。

ステップ3:資料準備と金融機関への相談・交渉

改善計画ができたら、金融機関に相談する準備を整えます。

【準備すべき資料リスト】

  1. 直近3期分の決算書(税理士の押印があるもの)
  2. 最新の試算表(できれば月次)
  3. 改善計画書(前述のステップ2で作成したもの)
  4. 事業計画書(今後3〜5年の売上・利益見通し)
  5. 資金繰り表(今後6ヶ月〜1年分)

これらの資料を持って、まずはメインバンクの担当者に相談してください。その際、以下のようなトークスクリプトを参考にしてください。

【交渉時のトークスクリプト例】

「いつもお世話になっております。今日は、経営者保証の解除についてご相談させていただきたく、お時間をいただきました。

経営者保証改革プログラムで、保証解除の環境が整ってきたと伺っております。弊社としても、ガイドラインの3要件を満たすべく、改善に取り組んでまいりました。

具体的には、(課題と改善内容を説明)。本日お持ちした資料をご覧いただき、弊社の状況が保証解除の対象となり得るか、ご意見をいただけますでしょうか。

また、もし不足している点があれば、具体的にご指摘いただき、今後の改善に活かしたいと考えております。」

このように、謙虚かつ前向きな姿勢で臨むことが重要です。金融機関は、真摯に経営改善に取り組む企業を必ず評価します。

よくある質問(FAQ)

Q: 赤字決算や債務超過の企業でも、経営者保証は外せますか?

A: 非常に厳しいのが現実ですが、不可能ではありません。特に「2期連続して償却前経常利益が赤字でないこと」などが一つの目安になります。赤字でも、それを改善するための具体的で説得力のある事業計画を提示できれば、金融機関が検討する可能性はあります。まずは専門家にご相談ください。

Q: 創業したばかりですが、保証なしで融資を受けることは可能ですか?

A: 可能です。特に「スタートアップ創出促進保証」は、創業予定者や創業後5年未満の法人を対象としており、経営者保証なしで最大3,500万円の融資を受けられる可能性があります。創業計画書の提出が重要になりますので、しっかり準備しましょう。

Q: 複数の金融機関から借入がありますが、1つの銀行だけ保証を外すことはできますか?

A: 可能です。ただし、他の金融機関とのバランスも考慮される場合があります。まずはメインバンクに相談し、ガイドラインに沿った対応を申し入れるのが一般的です。プロパー融資を保証付き融資に借り換える「プロパー融資借換特別保証制度」なども活用できる場合があります。

Q: 金融機関に保証解除を断られた場合、どうすればよいですか?

A: まずは断られた理由を具体的に確認することが重要です。金融機関には説明義務があるため、どの要件が不足しているのかを明確にしてもらいましょう。その上で、改善計画を練り直し、再度交渉するか、他の金融機関や日本政策金融公庫などの利用を検討するのが良いでしょう。

Q: 専門家に相談した方が良いのでしょうか?

A: 強く推奨します。特に、財務状況の客観的な評価や説得力のある事業計画書の作成には、税理士や中小企業診断士などの専門家の知見が非常に有効です。専門家が関与することで、金融機関からの信頼性が高まり、交渉がスムーズに進むケースが多くあります。

まとめ

経営者保証ガイドラインの改正は、中小企業経営者にとって、個人リスクから解放され、事業成長に専念するための大きな追い風です。

重要なのは、制度を正しく理解し、「法人と個人の分離」「財務基盤の強化」「経営の透明性」という3つの要件を満たすための具体的な行動を起こすことです。

本記事で解説したステップを参考に、まずは自社の現状把握から始めてみてください。元銀行員として断言しますが、金融機関は真摯に経営改善に取り組む企業を必ず評価します。

社長一人が全てを背負う時代は終わりました。

この記事が、あなたとあなたの会社が新たな一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。

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この記事を書いた人

はじめまして。「資金繰りベスト」ライターの佐藤真由美と申します。埼玉県さいたま市在住の45歳、中小企業の資金繰りと経営管理を専門とするファイナンシャルアドバイザー兼ライターです。

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