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資金調達でやってはいけないNG行動7選|元融資担当者が語る「審査で落とされる人」

資金調達は、中小企業の成長と存続を左右する極めて重要な経営課題です。しかし、融資審査の現場では、ほんの少しの準備不足や知識の欠如が原因で、惜しくも審査を通過できない経営者が後を絶ちません。

はじめまして。わたくし、佐藤真由美と申します。大手銀行にて10年間、中小企業向けの融資審査を担当した後、経営コンサルティング会社を経て、現在は独立した経営アドバイザーとして、多くの企業の資金繰りをサポートしております。

佐藤 真由美

銀行員時代、わたしは数えきれないほどの融資審査に携わってきました。その中で、「もう少し準備さえしていれば、この事業はきっと成功したはずなのに」と感じる残念なケースに何度も直面しました。

審査担当者は、提出された書類の数字をただ眺めているわけではありません。その裏にある経営者の事業への情熱、準備の周到さ、そして何よりも「この人にならお金を託せる」という信頼性まで、多角的に評価しているのです。

本記事では、私が審査の最前線で見てきた「審査で落とされる人」に共通する7つのNG行動を、元融資担当者という「内側」の視点から徹底的に解説します。

【この記事の結論】融資審査に落ちる経営者の7つのNG行動

融資審査を通過できない経営者には、「計画性の欠如」「信頼性の欠如」という共通点があります。元融資担当者の視点から、絶対に避けるべき7つのNG行動をまとめました。

  • ① 計画が曖昧
    事業計画書の売上予測や資金計画に具体的な数値根拠がなく、審査の土台に立てていない。
  • ② 面談準備が不足
    事業内容や財務状況を自身の言葉で説明できず、当事者意識の欠如を疑われる。
  • ③ 自己資金がない
    コツコツ貯めた自己資金がなく、事業への「本気度」が伝わらない。「見せ金」は100%見抜かれる。
  • ④ 資金使途が不明確
    「何に」「いくら」必要かを説明できず、どんぶり勘定と判断される。見積書や資金繰り表が必須。
  • ⑤ 複数同時申し込み
    手当たり次第な印象を与え、「申込ブラック」として貸し倒れリスクを懸念される。
  • ⑥ 粉飾決算
    赤字を隠すための「粉飾」は最も重い違反行為。正直に原因と改善策を示すことが重要。
  • ⑦ 滞納がある
    税金や社会保険料、既存借入の「滞納」は信用の失墜に直結する。基本的な約束を守れないと見なされる。

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資金調達 NG行動 7選
目次

NG行動1:事業計画書が曖昧で具体性に欠ける

融資審査の土台となるのが事業計画書です。しかし、この最も重要な書類の具体性が欠けているために、審査のスタートラインにさえ立てないケースが非常に多く見られます。

なぜ事業計画書の曖昧さが致命的なのか

審査担当者が事業計画書から最も知りたいのは、「融資した資金が、事業を通じて将来的にどのように回収されるのか」という一点に尽きます。つまり、返済計画の信憑性です。計画書が曖昧であるということは、この信憑性を示す根拠が何もない、と宣言しているようなものです。

私が審査を担当していた頃、特に問題だと感じたのは以下のようなケースです。

  • 売上予測の根拠が「希望的観測」:「市場が伸びているから」「競合が少ないから」といった漠然とした理由だけで、具体的な数値目標が積み上げられていない。
  • 市場分析や競合分析が皆無:自社の事業を取り巻く環境を客観的に分析できておらず、事業の強みや弱みを把握できていない。
  • 資金計画が大雑把:「運転資金として〇〇円」と記載されていても、その内訳(仕入、人件費、家賃など)や算定根拠が全く示されていない。

このような計画書を前にすると、審査担当者は「この経営者は、ご自身の事業を客観的に理解できていないのではないか」「事業運営そのものが計画性に欠けるのではないか」という疑念を抱かざるを得ません。これこそが、審査における致命的な第一印象となってしまうのです。

審査担当者が見ている3つのポイント

では、具体的に審査担当者は事業計画書のどこに注目しているのでしょうか。私が特に重視していたのは、以下の3つのポイントです。

ポイント良い例悪い例
1. 数値の根拠客単価×想定顧客数×営業日数など、具体的な計算式で売上予測が示されている。「月商100万円を目指します」と目標だけが書かれている。
2. 実現可能性地域の人口動態や競合店の状況を分析し、現実的なシェア率から売上を算出している。根拠なく「市場の10%のシェアを獲得する」といった非現実的な計画になっている。
3. リスク認識「競合店の出店」「原材料費の高騰」などのリスクを想定し、それに対する具体的な対策(差別化戦略、仕入先の複数確保など)が記載されている。事業の成功イメージばかりが語られ、リスクについては一切触れられていない。

これらのポイントは、経営者が事業をどれだけ「自分ごと」として捉え、深く思考しているかを測るバロメーターなのです。

改善のための具体的なアドバイス

もしご自身の事業計画書に不安を感じたら、以下の点を実践してみてください。私がコンサルティングでサポートし、実際に融資を獲得できた企業も、こうした地道な改善からスタートしました。

公的データを活用する

総務省統計局の人口データや、業界団体の調査レポートなど、客観的なデータを引用して市場規模やターゲット顧客層の存在を示しましょう。これにより、計画の信頼性が格段に向上します。

売上予測を分解する

「売上=客単価×客数」のように、売上を構成する要素に分解し、それぞれの数値をどう設定したのか、その根拠を一つひとつ丁寧に説明します。例えば、「近隣の競合店A店のランチ平均単価が1,200円であることから、当店では1,100円に設定」といった具体的な記述が有効です。

「もしも」を想定する

事業は計画通りに進まないことのほうが多いものです。「もし売上が計画の80%に留まった場合、どのようにコストを削減して利益を確保するのか」といった、下方リスクへの備えを具体的に示しておくことで、経営者のリスク管理能力をアピールできます。

事業計画書は、単なる作文ではありません。審査担当者との最初の対話であり、あなたの事業への情熱と論理的思考能力を示す、何より雄弁なプレゼンテーション資料なのです。

NG行動2:面談での受け答えが曖昧で自信がない

事業計画書という一次試験を突破すると、次はいよいよ審査担当者との面談です。この面談は、書類だけでは分からない経営者の「人となり」を見るための重要なプロセス。ここで自信なさげな態度や曖昧な受け答えをしてしまうと、それまでの努力が水泡に帰すことになりかねません。

面談で審査担当者が本当に見ているもの

面談の場で、私たち審査担当者が何よりも確認したいのは、経営者の「事業への深い理解度」と「何としてもこの事業を成功させるのだ」という覚悟です。

どれほど立派な事業計画書が提出されても、面談で経営者自身の口から事業内容や自社の財務状況についてよどみなく説明できなければ、私たちは「この計画書は、本当にこの人が作ったのだろうか?」「経営を他人に任せきりにしていないだろうか?」と疑念を抱きます。

銀行員は、いわば「お金を預かるプロ」であると同時に、「リスクを見抜くプロ」でもあります。経営者自身の言葉に熱意と自信が感じられない、数字の質問に対してしどろもどろになる、といった態度は、事業の不確実性を高める危険なシグナルとして捉えられてしまうのです。

絶対に避けるべきNGワードと態度

私が審査の現場で幾度となく耳にし、そのたびに「この方への融資は難しい」と判断せざるを得なかったNGワードがあります。それは、経営者としての当事者意識の欠如を示す言葉です。

  • 「たぶん」「~だと思います」:自信のなさが透けて見え、計画の実現性に疑問符がつきます。
  • 「とりあえず」「なんとなく」:事業に対する計画性の欠如を露呈してしまいます。
  • 「税理士に任せているので、よく分かりません」:これは最悪の回答です。財務状況を把握していない経営者に、会社のかじ取りは任せられません。
  • 「いくら貸してもらえますか?」:自社の事業にいくら必要かを自分で算出できない、計画性のない人物と見なされます。

言葉遣いだけではありません。約束の時間に遅れる、服装がだらしないといった基本的なビジネスマナーの欠如も、「細かな部分に配慮できない人は、経営においても詰めの甘さが出るのではないか」という印象を与え、確実にマイナス評価につながります。

面談を成功させるための準備と心構え

面談は、準備次第で結果が大きく変わります。私がコンサルティングの際、必ず経営者の皆様にお伝えしている準備のポイントは以下の通りです。

1. 想定問答集を作成する

事業計画書を隅々まで読み返し、審査担当者から突っ込まれそうな点をリストアップし、それに対する回答を簡潔にまとめておきましょう。

「なぜこの事業を始めようと思ったのですか?」「3年後の目標売上は?その根拠は?」「競合他社に対する強みは何ですか?」といった基本的な質問には、即座に答えられるようにしておくことが不可欠です。

2. 重要数字を暗記する

売上高、原価、利益率、損益分岐点売上高など、自社の財務に関する主要な数字は必ず頭に入れておきましょう。数字に基づいた具体的な説明は、言葉の説得力を飛躍的に高めます。

3. リスクと対策を語れるようにする

事業の良い面だけでなく、潜在的なリスク(例えば、売上が計画通りにいかなかった場合など)と、それに対する具体的な対応策を自分の言葉で説明できるように準備しておきましょう。リスクを直視し、備えている姿勢は、経営者としての信頼感を高めます。

以前、私が支援したある若き経営者は、初めての融資面談で極度に緊張し、うまく話すことができませんでした。しかし、二度目の挑戦に向けて、上記の準備を徹底的に行いました。

彼は自社の事業計画に関するあらゆる数字を頭に叩き込み、何度も声に出して説明する練習を繰り返したのです。その結果、面談当日は自信を持って審査担当者の質問に答えることができ、見事、希望額の融資を獲得しました。

面談は、あなたという経営者の「覚悟」を伝えるための舞台です。万全の準備こそが、自信の源泉となるのです。

NG行動3:自己資金がまったくない、または「見せ金」に頼る

融資審査において、事業計画と並んで最も厳しくチェックされるのが「自己資金」です。自己資金がまったくない、あるいは一時的に借りてきたお金で自己資金があるように見せかける「見せ金」は、審査において致命的なNG行動と言えます。

なぜ自己資金がそれほどまでに重要なのか

自己資金は、単なる事業資金の一部ではありません。審査担当者にとっては、経営者の「事業に対する本気度」「リスク許容度」を測る、極めて重要な指標なのです。

佐藤 真由美

私が銀行で融資審査を行っていた際、自己資金が潤沢な申請者に対しては、「この方は、ご自身の資産を投じてでも事業を成功させたいという強い覚悟をお持ちだ。時間をかけて周到に準備を進めてこられたのだろう」というポジティブな第一印象を持ちました。

逆に、自己資金がゼロの申請者に対しては、「なぜご自身では一切リスクを取らずに、他人のお金だけで事業を始めようとするのだろうか」という根本的な疑問を抱かざるを得ませんでした。

事業の立ち上げには、想定外の出費がつきものです。自己資金は、そうした不測の事態に備えるためのバッファーであり、経営者の精神的な余裕にも繋がります。このバッファーがない状態での船出は、あまりにも危険な賭けであると、金融機関は判断するのです。

絶対にバレる「見せ金」のカラクリ

自己資金が重要だと知っているがゆえに、一部の申請者は「見せ金」という禁じ手に手を出してしまいます。これは、親族や知人、あるいはノンバンクなどから一時的にお金を借り、自分の通帳に入金することで、自己資金が豊富にあるように見せかける行為です。

しかし、断言します。見せ金は100%バレます。

なぜなら、融資審査では必ず、申請者個人の通帳(通常は過去6ヶ月~1年分)の提出を求め、その入出金の履歴を一行一行、精査するからです。審査担当者は、以下のような不自然な金の動きを決して見逃しません。

  • 申請直前の不自然な大口入金:給与や事業収入とは明らかに性質の異なる、まとまった金額の入金。
  • 入金後、すぐに同額程度の出金:融資実行後に、見せ金の返済を想定させるような動き。

このような履歴を見つけた場合、私たちは必ず「この〇月〇日の〇〇円の入金は何ですか?」と質問します。ここで曖昧な説明をしたり、嘘をついたりすれば、その時点で信用は失墜します。

見せ金は、単に自己資金として認められないだけでなく、「金融機関を騙そうとした」という極めて悪質な行為と見なされ、審査は即刻否決。さらに、その事実は信用情報機関に記録が残る可能性もあり(いわゆる「申込ブラック」)、将来的に他の金融機関からの借入も困難になるという、取り返しのつかない事態を招きます。

自己資金として認められるもの、認められないもの

では、一体何が自己資金として認められるのでしょうか。基本的な考え方は、「返済義務のない、出どころが明確なお金」であることです。

自己資金として認められるもの自己資金として認められないもの
コツコツ貯めた個人の預貯金カードローンや消費者金融からの借入金
配偶者の預貯金(同意がある場合)知人・友人からの借入金(たとえ口約束でも)
親族からの贈与(贈与契約書があると望ましい)いわゆる「タンス預金」(入金履歴がなく出所が不明なため)
退職金
保険の解約返戻金
有価証券や不動産の売却益
みなし自己資金(事業のために既に支払った費用で、領収書等で証明できるもの)

特に、親族から資金援助を受ける場合は注意が必要です。「借りた」のではなく「もらった」ことを証明するために、簡単なもので構いませんので贈与契約書を交わしておくことを強くお勧めします。これにより、その資金が返済不要な純粋な自己資金であることを、客観的に示すことができます。

自己資金は、一朝一夕には準備できません。事業を始めたいと思ったら、その瞬間から計画的に貯蓄を始める。その地道な努力こそが、金融機関からの信頼を勝ち取るための、最も確実な第一歩なのです。

NG行動4:資金使途が不明確で、どんぶり勘定になっている

「運転資金として500万円お願いします」

融資面談でこのように切り出す経営者は少なくありません。しかし、その500万円が具体的に「何に」「いくら」「いつまで」必要なのかを明確に説明できなければ、その申請が通ることはまずありません。資金使途の不明確さ、いわゆる「どんぶり勘定」は、審査担当者が最も嫌うNG行動の一つです。

なぜ資金使途の明確化が必須なのか

金融機関が融資した資金は、事業を成長させ、その結果として生み出された利益から返済される、という大原則があります。つまり、貸し手である銀行にとって、融資した資金がきちんと事業の成長に繋がり、返済原資を生み出すかどうかは、最大の関心事なのです。

佐藤 真由美

資金使途が不明確であるということは、経営者自身が「借りたお金をどのように使えば事業が成長するのか」という道筋を描けていない、と公言しているに等しい行為です。

私が審査担当者だった頃も、「とりあえず手元に資金があれば安心だから」といった理由で融資を申し込む方がいましたが、このような計画性のない資金は、多くの場合、効果的に活用されることなく、ただ漠然と消費されてしまう傾向にありました。これでは、返済原資が生まれるはずもありません。

金融機関は、ボランティアでお金を貸しているのではありません。事業の成長に貢献し、そのリターンとして利息と共に元本を回収するという、極めて合理的なビジネスを行っています。あなたの事業の成長ストーリーを、具体的な数字で語ること。それが、資金使途を明確にする、ということなのです。

「設備資金」と「運転資金」の明確な切り分け

事業資金は、大きく「設備資金」と「運転資金」に分けられます。この二つを混同せず、それぞれに必要な金額の根拠を具体的に示すことが極めて重要です。

資金の種類内容根拠として示すべき書類の例
設備資金事業を長期的に運営するために必要な設備(機械、車両、内外装工事、PCなど)を購入するための資金。・購入する設備の見積書
・店舗の工事請負契約書
・不動産の売買契約書
運転資金事業を日々回していくために必要な資金(人件費、家賃、仕入費用、広告宣伝費など)。資金繰り表
・仕入先との契約書
・従業員の給与台帳

特に運転資金の算出は、どんぶり勘定になりがちです。その際に役立つのが、「資金繰り表」です。最低でも過去3ヶ月〜半年分の現金の出入りを詳細に記録し、将来3ヶ月〜半年間の入出金を予測することで、「なぜ」「いくら」の運転資金が必要なのかを論理的に説明することができます。

例えば、

「今後、新規顧客開拓のために広告宣伝を強化する計画です。具体的には、Web広告に月10万円、3ヶ月で30万円を投じます。この広告効果で売上が発生するのは3ヶ月後からと見込んでいるため、それまでの間の資金として〇〇円が必要です」

といった説明ができれば、審査担当者も納得しやすいでしょう。

資金使途違反という最悪のシナリオ

注意すべきは、融資実行後に、申請した資金使途とは異なる目的でお金を使ってしまう「資金使途違反」です。例えば、「店舗の改装費用」として設備資金の融資を受けたにもかかわらず、実際には借入金の返済に充ててしまう、といったケースです。

これは、金融機関との信頼関係を根底から覆す重大な契約違反です。発覚した場合、融資の一括返済を求められるだけでなく、詐欺罪に問われる可能性すらあります。融資実行後、銀行は領収書の提出を求めたり、現地調査を行ったりすることで、資金が計画通りに使われているかを確認します。約束は、必ず守らなくてはなりません。

必要な資金を、必要なだけ、明確な根拠をもって申請する。この当たり前のようで難しい基本を徹底することが、信頼を勝ち取るための鍵となるのです。

NG行動5:複数の金融機関に同時に申し込みを行っている

「審査に落ちたら怖いから、念のため複数の銀行に同時に申し込んでおこう」

このように考える経営者は少なくありません。一見すると、リスクヘッジのための賢明な行動のように思えるかもしれません。しかし、これは融資審査の世界では「絶対にやってはいけない」NG行動の典型例です。

「申込ブラック」という見えない烙印

なぜ、複数の金融機関への同時申し込みが問題なのでしょうか。それは、あなたの申し込み情報が信用情報機関を通じて、全ての金融機関に筒抜けになっているからです。

日本には、CIC、JICC、KSCといった個人の信用情報を管理する機関が存在します。金融機関は融資の申し込みを受けると、必ずこれらの信用情報機関に照会をかけ、申込者の過去の借入履歴や返済状況、そして「いつ、どの金融機関に申し込みをしたか」という事実を確認します。この申し込み履歴は、照会日から6ヶ月間記録として残ります。

私が審査を担当していた際も、ある申込者の信用情報を照会したところ、わずか数日の間に、当行を含め5つの金融機関に融資を申し込んでいる記録が見つかりました。この瞬間、審査担当者の頭には、以下のような強烈なネガティブイメージが浮かび上がります。

  • 「よほどお金に困っているのではないか?」:計画的ではなく、手当たり次第に借り入れようとしている印象を与え、貸し倒れリスクが高いと判断されます。
  • 「他の金融機関から、すでに断られているのではないか?」:申し込み記録はあるのに契約記録がない場合、「何か問題があって他社では審査に通らなかった人物」というレッテルを貼られてしまいます。
  • 「総量規制に抵触するのではないか?」:特に消費者金融からの借入がある場合、年収の3分の1までという総量規制の上限を超える可能性が疑われます。

このように、短期間に複数の申し込み履歴が記録されている状態は、俗に「申込ブラック」と呼ばれ、それだけで審査が著しく不利になります。良かれと思って取った行動が、自らの首を絞める結果となってしまうのです。

金融機関が抱く「不信感」の正体

同時申し込みが敬遠される根本的な理由は、金融機関が経営者に抱く「不信感」にあります。私たち金融機関は、融資を通じて企業の成長を長期的にサポートするパートナーでありたいと考えています。しかし、複数の金融機関に同時にアプローチする行為は、「どの銀行でもいいから、とにかくお金を貸してくれれば良い」というメッセージとして受け取られかねません。

それは、結婚相手を探しているのに、同時に複数の相手にプロポーズしているようなものです。どの相手に対しても誠実であるとは言えないでしょう。金融機関も同様に、「当行を本命として、真剣に付き合ってくれる気がないのではないか」と感じてしまうのです。

融資申し込みの正しい進め方

では、どのように融資の申し込みを進めるのが正解なのでしょうか。答えはシンプルです。

「一社ずつ、丁寧に進めること」

まずは、自社の事業内容や規模に最も合っていると思われる金融機関を一つ選び、そこに全力を注ぎます。

事業計画を練り上げ、万全の準備で面談に臨む。そして、その結果を待つ。もし、残念ながら否決となった場合は、その理由を可能な限り担当者からヒアリングし、事業計画の弱点を修正した上で、次の金融機関にアプローチする。この地道なプロセスこそが、成功への唯一の道です。

焦る気持ちは痛いほど分かります。しかし、融資は「数打てば当たる」というものでは決してありません。むしろ、打てば打つほど、あなたの信用情報には傷がついていくのです。一社一社との対話を大切にし、誠実な姿勢で臨むこと。それが、信頼という名の最も強固な担保を築き上げることにつながります。

NG行動6:赤字決算を隠すために粉飾している

「赤字決算では、融資など到底受けられない」

そう思い込み、決算書の見栄えを良くするために売上を水増ししたり、経費を少なく計上したりする「粉飾決算」に手を染めてしまう経営者がいます。これは、融資審査におけるNG行動の中でも、最も罪が重く、取り返しのつかない事態を招く、絶対にやってはいけない行為です。

なぜ粉飾はプロの目をごまかせないのか

経営者からすれば、少し数字を操作するだけの簡単な作業に思えるかもしれません。しかし、毎日何十社もの決算書を読み解いている私たち融資審査のプロの目は、決して甘くありません。

私たちは、単年度の数字だけを見ているのではなく、過去数年分の決算書を比較し、業界平均値と照らし合わせながら、数字の裏に隠された矛盾点を徹底的に洗い出します。

例えば、以下のような点は、粉飾を疑う典型的なサインです。

  • 売上総利益率の不自然な変動:売上が伸びているのに、なぜか利益率が急に改善している。これは、架空の売上を計上しているか、仕入を過少に計上している可能性を疑います。
  • 売掛金の異常な増加:売上は伸びているのに、現金が全く増えていない。これは、実際には回収できていない売掛金(不良債権)を隠しているか、架空の売上を立てている兆候です。
  • 在庫の不自然な積み上がり:売上が横ばいなのに、在庫(棚卸資産)だけが年々増え続けている。これは、売れ残った不良在庫を資産として計上し、損失を隠している可能性があります。

これらの矛盾点について面談で鋭く質問を投げかけると、粉飾している経営者は必ず答えに窮します。その時点で、万事休す。信頼関係は完全に崩壊し、二度とその金融機関の門を叩くことはできなくなるでしょう。

粉飾決算がもたらす、あまりにも重い代償

粉飾決算は、単に融資が受けられなくなるだけでは済みません。それは、経営者としてのキャリア、ひいては人生そのものを破滅させかねない、極めて重大なコンプライアンス違反です。

発覚した場合、金融機関からは融資金の一括返済を求められるのが通常です。さらに、金融機関を騙して融資を得たとして、詐欺罪などの刑事罰に問われる可能性も十分にあります。一度失った信用を取り戻すことは、ほぼ不可能です。

赤字決算との正しい向き合い方

そもそも、「赤字決算=融資NG」という考え方自体が間違っています。もちろん、黒字であることが望ましいのは言うまでもありません。しかし、金融機関は、赤字という「結果」だけを見て、機械的に判断を下しているわけではないのです。

関連記事: 赤字決算でも融資は受けられる?銀行が「貸したい」と思う赤字企業の3つの特徴

重要なのは、なぜ赤字に陥ったのかという「原因」を経営者自身が正確に分析し、それをどう乗り越えて黒字化していくのかという「具体的な改善計画」を、説得力をもって示せるかどうかです。

例えば、赤字には大きく分けて2つの種類があります。

1. 前向きな(一過性の)赤字

事業拡大のための先行投資(広告宣伝費、人材採用費など)や、新店舗出店に伴う初期費用などが原因で、一時的に発生した赤字。これは、将来の成長のための必要な痛みであり、明確な投資対効果を説明できれば、むしろ評価されることさえあります。

2. 後ろ向きな(構造的な)赤字

売上の長期的な低迷、コスト構造の問題、市場の変化への対応の遅れなど、事業の根幹に関わる問題が原因で発生している赤字。この場合は、問題を真正面から認め、事業構造の改革や新商品開発といった、抜本的な改善策を示す必要があります。

佐藤 真由美

私が銀行員時代に融資を実行した企業の中にも、赤字決算の企業は数多くありました。
その経営者たちに共通していたのは、決算書の数字をごまかすことなく、自社の弱みを正直に認め、その上で「この課題をこう乗り越え、必ず事業を立て直します」という強い意志と、その裏付けとなる具体的な行動計画を持っていたことです。

私たち審査担当者が見たいのは、完璧に化粧された美しい決算書ではありません。たとえ泥臭くとも、自社の現状と真摯に向き合い、未来を切り拓こうとする経営者の「覚悟」なのです。

NG行動7:税金や公共料金、借入金の返済を滞納している

事業計画がどれほど素晴らしく、自己資金が潤沢にあっても、たった一つの「滞納」という事実が、すべての努力を無に帰してしまうことがあります。

税金や社会保険料、公共料金、そして既存の借入金の返済などを滞納している状態は、経営者個人の信用、ひいては企業全体の信頼性を根底から揺るがす、極めて深刻なNG行動です。

「納税の義務」は社会的な信用の根幹

融資審査において、なぜ滞納がこれほどまでに問題視されるのでしょうか。それは、特に税金や社会保険料の納付が、単なる支払い義務を超えた「国民の三大義務」の一つであり、企業の社会に対する基本的な責任と見なされているからです。

私が審査を担当していた頃、融資の申し込みがあると、必ず「納税証明書」の提出を求めました。これは、税金をきちんと納めているかを確認するためですが、その裏にはもっと深い意味があります。納税という基本的な義務を果たせない経営者が、果たして金融機関との「返済」という約束を守れるだろうか、という根本的な問いかけです。

納税を軽視する姿勢は、経営者としてのコンプライアンス意識の欠如、ひいては事業運営全体のルーズさの表れと判断されてしまうのです。

個人のクレジットカードの支払遅延などももちろんマイナス評価ですが、税金や社会保険料の滞納は、それとは比較にならないほど重い意味を持ちます。それは、企業の公的な責任感の欠如を示す、決定的な証拠と見なされるからです。

信用情報に刻まれる「異動情報」という不名誉な記録

税金だけでなく、既存の借入金(住宅ローンやカードローンなど)の返済を3ヶ月以上延滞したり、保証会社による代位弁済が行われたりすると、その事実は信用情報機関に「異動情報」として登録されます。これがいわゆる「ブラックリストに載る」という状態です。

この「異動情報」が登録されていると、新たな融資を受けることは、日本政策金融公庫であれ民間の金融機関であれ、極めて困難になります。金融機関にとって、過去に返済の約束を破ったという事実は、将来の貸し倒れリスクを予感させる、最も危険なシグナルだからです。

意外と見落としがちなのが、スマートフォンの割賦代金の支払い遅延です。これもローン契約の一種であるため、滞納すれば信用情報に傷がつく原因となります。日々の細かな支払いが、あなたの信用を形作っていることを忘れてはなりません。

信頼を回復するための唯一の道

もし、現在何らかの滞納がある場合は、融資の申し込みをする前に、まずその問題を解決することが最優先です。見て見ぬふりをしていても、状況は悪化する一方です。

1. すぐに専門機関に相談する

税金の滞納であれば税務署、年金であれば年金事務所に自ら出向き、現状を正直に話して、分納などの相談をしてください。誠実に対応する姿勢を見せることが重要です。

2. 完済し、クリーンな状態にする

借入金の延滞がある場合は、一刻も早く返済を済ませましょう。ただし、一度「異動情報」が登録されると、完済後も約5年間はその記録が残ることに注意が必要です。

3. なぜ滞納したのかを説明できるようにする

やむを得ない事情(急な入院など)で一時的に支払いが遅れてしまった場合は、その経緯と、再発防止策を具体的に説明できるように準備しておくことが、誠意を示す上で不可欠です。

資金繰りが厳しい時ほど、支払いの優先順位を見失いがちです。しかし、社会的な信用を維持するための支払いを後回しにすることは、将来の可能性の芽を自ら摘んでしまう行為に他なりません。

日々の資金管理を徹底し、約束を誠実に守り続けること。その積み重ねこそが、いざという時にあなたを助ける、何物にも代えがたい「信用」という資産になるのです。

よくある質問(FAQ)

融資審査に関して、経営者の皆様からよく寄せられる質問について、元審査担当者の視点からお答えします。

Q: 融資審査に落ちた後、再申請はいつからできますか?

A: 最低でも6ヶ月は空けましょう。重要なのは、単に期間を空けるだけでなく、審査に落ちた原因を分析・改善することです。改善が見られないまま短期間で再申請しても、結果は変わりません。否決理由を可能な限り把握し、具体的な改善実績を示して再挑戦することが重要です。

Q: 自己資金はどのくらい必要ですか?

A: 創業融資の場合、融資希望額の3分の1程度が目安です。ただし、金額よりも「どう貯めたか」という計画的な貯蓄プロセスが重視されます。通帳でコツコツ貯めた履歴を示せれば、評価は高まります。申請直前の不自然な大口入金(見せ金)は必ず見抜かれ、信用を失うので絶対にやめましょう。

Q: 赤字決算でも融資を受けられる方法はありますか?

A: 可能性はあります。重要なのは赤字の「質」です。事業拡大のための先行投資など、将来の黒字化につながる「前向きな赤字」は、合理的な説明ができれば評価されます。しかし、売上不振など「構造的な赤字」の場合は、まず事業の立て直しが最優先です。

Q: 融資面談で絶対に言ってはいけないことは何ですか?

A: 「たぶん」「~だと思います」といった曖昧な言葉や、「税理士に任せているので分かりません」という丸投げ姿勢はNGです。また、「いくら貸してもらえますか?」と尋ねるのも、計画性のなさを露呈します。自社の事業と数字を完全に把握し、自信を持って語ることが重要です。

Q: 事業計画書はどこまで詳しく書けばいいですか?

A: 「知らない第三者が読んでも、事業内容と返済計画が理解できるレベル」が理想です。特に売上予測は、「客単価×客数」のように具体的な計算式で根拠を示しましょう。「頑張ります」といった精神論ではなく、客観的なデータと論理で説明することが求められます。

Q: 税金の滞納があると融資は絶対に通りませんか?

A: はい、原則として通りません。納税という公的な義務を果たせない場合、社会的な信用はゼロと見なされます。まずは税務署に相談して滞納を解消し、クリーンな状態にしてから申請することが大前提です。

Q: 創業間もない会社でも融資を受けられますか?

A: はい、可能です。日本政策金融公庫の「新創業融資制度」などを活用できます。創業融資では実績よりも、事業の将来性、経営者の経験や資質が重視されます。同業種での経験や、計画的に準備した自己資金、熱意ある事業計画書が高く評価されます。

Q: 融資審査にかかる期間はどのくらいですか?

A: 金融機関や制度によりますが、申し込みから実行まで約1ヶ月が目安です。ただし、繁忙期はさらに時間がかかることもあります。資金が必要な時期から逆算し、2〜3ヶ月の余裕を持って準備を始めると安心です。

まとめ

今回は、元融資担当者の視点から、資金調達で絶対にやってはいけない7つのNG行動について解説しました。

  1. 事業計画書が曖昧で具体性に欠ける
  2. 面談での受け答えが曖昧で自信がない
  3. 自己資金がまったくない、または「見せ金」に頼る
  4. 資金使途が不明確で、どんぶり勘定になっている
  5. 複数の金融機関に同時に申し込みを行っている
  6. 赤字決算を隠すために粉飾している
  7. 税金や公共料金、借入金の返済を滞納している

これらのNG行動に共通しているのは、「計画性の欠如」「信頼性の欠如」という、事業経営において最も重要な二つの要素が欠けている点です。

佐藤 真由美

融資審査は、単なる減点方式のテストではありません。審査担当者は、あなたの事業の将来性を見極め、共に成長していくパートナーとなれるかどうかを見ています。

だからこそ、表面的なテクニックに走るのではなく、自らの事業と真摯に向き合い、その情熱と計画性を、誠実な言葉と具体的な数字で示すことが何よりも重要です。

本記事が、これから資金調達という大きなハードルに挑む、すべての経営者の皆様にとって、その一助となれば幸いです。

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この記事を書いた人

はじめまして。「資金繰りベスト」ライターの佐藤真由美と申します。埼玉県さいたま市在住の45歳、中小企業の資金繰りと経営管理を専門とするファイナンシャルアドバイザー兼ライターです。

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