「ファクタリングと債権譲渡って、結局何が違うの？」
資金調達を検討中のあなたが、この疑問にぶつかっているなら、それは当然のことです。どちらも「売掛金を活用した資金調達」として紹介されることが多く、違いが分からないまま選択を迫られている経営者様が後を絶ちません。
結論から申し上げます。
ファクタリングは「債権譲渡」という法律行為を応用した資金調達専門サービスです。つまり、債権譲渡が「手段」で、ファクタリングがその手段を使った「サービス」という関係性になります。
山田 麻里この違いを理解せずに選択すると、手数料で数十万円の損失を被ったり、取引先にバレて信用を失うリスクがあります。
この記事では、金融コンサルタントとして1000社以上の資金調達を支援してきた私が、両者の本質的な違いから、あなたの状況に最適な選択方法まで、実例を交えて徹底解説します。
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結論：ファクタリングと債権譲渡の最も大きな違いとは？
目的の違い：「資金調達」か、より広範な「権利移転」か
両者の最も大きな違いは、その「目的」です。
ファクタリングの目的
ほぼ100%、「売掛債権（請求書）を早期に現金化すること」に限定されます。つまり、資金調達のための専門サービスです。
債権譲渡の目的
資金調達だけでなく、債務の返済や融資の担保提供など、より幅広い目的で利用される法律行為そのものを指します。
要するに、お腹が空いた時に「レストランに行く」のがファクタリングで、食材を手に入れる「買い物」という行為そのものが債権譲渡、と考えると分かりやすいかもしれません。レストランは食事をするための場所ですが、買い物は食事の準備だけでなく、様々な目的のために行いますよね。
仕組みの違い：契約形態と関与する当事者
実務上の大きな違いは、「売掛先に知られるかどうか」を選択できる点にあります。
ファクタリング
利用者とファクタリング会社の2社間で行う契約と、売掛先（債務者）の承諾を得て行う3社間の契約を選択できます。
一般的な債権譲渡
原則として、債権が譲渡されたことを売掛先へ通知、または承諾を得ることが必須となります。
この「売掛先に知られずに資金調達できる」という選択肢があることが、ファクタリングが中小企業にとって使いやすいサービスとして普及した大きな理由です。
一目でわかる比較表
2つの違いを、以下の表にまとめました。
| 項目 | ファクタリング | 債権譲渡（一般的な法律行為） |
|---|---|---|
| 目的 | 主に資金調達 | 資金調達、債務弁済、担保提供など |
| 対象債権 | 主に売掛債権（請求書） | 売掛債権、貸付金債権など広範 |
| 契約形態 | 2社間・3社間が選択可能 | 3者間の関係が基本 |
| 手数料 | 発生する（融資より高め） | 発生する場合がある |
| 審査対象 | 主に売掛先の信用力 | ケースバイケース |
| 登記 | 2社間では必要な場合が多い | 第三者対抗要件として必要 |
そもそも「債権譲渡」とは？基本を理解する
民法で定められた権利の移転
債権譲渡とは、文字通り「債権」という権利を、その内容を変えずに他人へ譲り渡す法律行為です。
例えば、あなたの会社（A社）が取引先（B社）に持つ100万円の売掛債権を、C社に譲渡したとします。
すると、取引先（B社）は今後、C社に対して100万円を支払う義務を負うことになります。
この「権利を移転する」という基本的な仕組みが、ファクタリングサービスの根幹を成しているのです。
債権譲渡の主な活用シーン
資金調達目的以外では、以下のような活用方法があります。
- 弁済のため：自社の買掛金と相殺するために、取引先への売掛債権を譲渡する。
- 担保のため：銀行融資の担保として、保有する債権を譲渡する（譲渡担保）。
私がコンサルした企業では、事業承継の際に、親子会社間で債権を整理するために活用されたケースもありました。このように、債権譲渡は非常に幅広い場面で使われる法律行為なのです。
「ファクタリング」とは？債権譲渡を応用した資金調達サービス
なぜ今、ファクタリングが注目されるのか？
ファクタリングが注目される最大の理由は、融資以外の迅速な資金調達手段である点です。
銀行融資との決定的な違いは、審査で重視されるポイントです。
- 銀行融資：主に自社の経営状況や担保・保証人が重視される。
- ファクタリング：主に売掛先の支払い能力（信用力）が重視される。
そのため、赤字決算や税金滞納、創業間もないといった理由で銀行融資を断られた企業でも、利用できる可能性が十分にあるのです。
この手軽さとスピード感が、急な資金需要を抱える中小企業にとって、まさに「救いの手」となることがあります。
参考: ファクタリングと銀行融資の違い
2社間と3社間ファクタリングの違い
ファクタリングには、大きく分けて2つの契約形態があります。どちらを選ぶかで、手数料や手続きが大きく変わります。
2社間ファクタリング
- 契約する人 → あなたとファクタリング会社の2社のみ。
- メリット → 売掛先に知られずに資金調達が可能。最短即日で入金されるスピード感。
- デメリット → ファクタリング会社のリスクが高いため、手数料は高め（相場：8%～18%）になる。
参考: 2社間ファクタリングとは
3社間ファクタリング
- 契約する人 → あなた、ファクタリング会社、売掛先の3社。
- メリット → 売掛先の承諾を得るため、ファクタリング会社の未回収リスクが低減。そのため、手数料が安い（相場：5%～10%）。
- デメリット → 売掛先の承諾が必須。手続きに時間がかかる場合がある。
【実践編】コンサルタントが教える！状況別の使い分けガイド
理論は分かった。では、実際に「自分の会社はどっちを使えばいいの？」という疑問にお答えします。
ケース1：急な資金需要にスピーディーに対応したい場合
→ 結論：2社間ファクタリングが最適
「急な大口受注で仕入れ資金がすぐに必要」
「取引先の入金遅延で、明日の支払いができない…！」
このような緊急時には、最短即日での資金化も可能な2社間ファクタリングが有効です。銀行融資の審査を待つ時間的余裕がない場合に、まず検討すべき選択肢と言えるでしょう。
ケース2：取引先に知られずに資金調達したい場合
→ 結論：2社間ファクタリング一択
「資金繰りが厳しいと知られたくない」
「長年の取引関係に、 괜な心配をかけたくない」
経営者として、そう考えるのは当然のことです。この場合、売掛先の承諾が不要な2社間ファクタリングが唯一の選択肢となります。ただし、手数料が高くなる点は覚悟しておく必要があります。
ケース3：手数料を抑え、計画的に資金繰りを改善したい場合
→ 結論：3社間ファクタリングを検討
緊急性はないものの、「継続的にキャッシュフローを改善したい」「特定の取引先の入金サイクルが長く、いつも資金繰りが圧迫される」といった場合には、手数料の低い3社間ファクタリングが適しています。
この選択ができるのは、売掛先との信頼関係が良好であることが絶対条件です。事前に「資金繰りの安定化のために、ファクタリングというサービスを利用するかもしれません」と相談できる関係性があれば、非常に強力な武器になります。
利用前に知っておきたい注意点とリスク
便利なサービスですが、利用前に必ず知っておくべき注意点があります。ここを知らないと、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。
債権譲渡登記の必要性と効果
特に2社間ファクタリングでは、ファクタリング会社から「債権譲渡登記」を求められることがあります。
これは、簡単に言えば「この請求書の権利は、法的にファクタリング会社に移りましたよ」と、国（法務局）に登録して公に宣言する手続きです。ファクタリング会社が、あなたから同じ債権を別の会社にも売られる「二重譲渡」のリスクを防ぐために行います。
- メリット：登記を行うことでファクタリング会社の信用が増し、手数料が安くなるケースがある。
- デメリット：登記情報は誰でも閲覧可能なため、取引先や銀行が確認すれば、ファクタリング利用の事実を知られる間接的なリスクがある。
悪徳業者を見分けるポイント
残念ながら、ファクタリングを装い、実質的に高金利な貸付を行う悪徳業者が存在します。以下のポイントを必ず確認してください。
最重要チェックポイント：「償還請求権（しょうかんせいきゅうけん）」の有無
ノンリコース契約（償還請求権なし）
これが正規のファクタリングです。万が一、売掛先が倒産しても、あなたに返済義務はありません。
リコース契約（償還請求権あり）
これは危険信号です。売掛先が倒産した場合、あなたが代わりにファクタリング会社へ返済する義務を負います。これは実質的に「売掛債権を担保にした融資」であり、貸金業登録のない業者が行えば違法となります。
契約書に「償還請求権」「買戻し特約」といった文言がないか、必ず確認しましょう。
山田 麻里償還請求権については「ファクタリングの償還請求権とは？あり・なし徹底比較ガイド」という記事でも徹底的に掘り下げていますので、ぜひ確認してください。
よくある質問（FAQ）
最後に、皆様からよくいただく質問にお答えします。
Q: ファクタリングを利用すると、取引先に知られてしまいますか？
A: 2社間ファクタリングを選べば、原則として取引先に知られることはありません。ただし、前述の通り債権譲渡登記が必要な場合、登記情報を確認されると知られる可能性はゼロではありません。3社間ファクタリングの場合は、取引先の承諾が必須のため、必ず知られることになります。
Q: 手数料の相場はどれくらいですか？
A: 一般的に、2社間ファクタリングで8%～18%、3社間ファクタリングで5%～10%程度が相場です。これはあくまで目安であり、売掛先の信用力や売掛金の金額、登記の有無によって変動します。
Q: 個人事業主でもファクタリングは利用できますか？
A: はい、多くのファクタリング会社が個人事業主やフリーランスを対象としたサービスを提供しています。法人格の有無は問われませんが、請求書などで証明できる「確定した売掛債権」があることが利用の条件となります。
Q: 審査ではどのような点が重視されますか？
A: ファクタリングの審査で最も重視されるのは、あなたの会社の信用力よりも「売掛先の支払い能力（信用力）」です。そのため、あなたの会社が赤字決算であっても、売掛先が上場企業や大手企業であれば、審査に通る可能性は十分にあります。
Q: 取引先との契約で「債権譲渡禁止特約」がある場合、ファクタリングは利用できませんか？
A: 原則、利用できます。2020年4月の民法改正により、譲渡禁止特約が付いている債権であっても、ファクタリングは有効となりました。ただし、特約の存在を知りながら譲渡した場合、取引先との信頼関係が悪化するリスクは残ります。実行する際は、慎重な判断が必要です。
まとめ
今回は、ファクタリングと債権譲渡の違いについて解説しました。
最後に、重要なポイントをもう一度おさらいしましょう。
- 債権譲渡は、権利を移転する「法律行為そのもの」。
- ファクタリングは、債権譲渡を応用した「資金調達サービス」。
- 「とにかく急いで、誰にも知られずに」なら2社間ファクタリング。
- 「手数料を抑えて、計画的に」なら3社間ファクタリング。
- 契約前に「ノンリコース（償還請求権なし）」であることを必ず確認する。
私のコンサルタント経験上、経営の安定は、いかに多くの「資金調達の選択肢」を持てるかにかかっています。銀行融資だけが全てではありません。
この記事を参考に、ファクタリングと債権譲渡の違いを正しく理解し、貴社の状況に最適な一手を見つけるきっかけとしていただければ、これほど嬉しいことはありません。
あなたの事業の成功を、心から応援しています。
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