月末の支払いが迫っているのに、取引先からの入金はまだ先…。
売上は堅調なのに、資金繰りに不安を感じる。こんな状況に陥ったことはありませんか?
中小企業や個人事業主にとって、「資金繰り」は永遠の課題です。
特に売掛金の回収までの期間が長引くと、その間の運転資金確保に頭を悩ませることになります。
そんなとき、ファクタリングという選択肢があります。
ただ「2社間」と「3社間」という2つの方式があり、どちらが自社に適しているのか判断に迷うケースも少なくありません。
この記事では、金融コンサルティング会社での実務経験を持つ筆者が、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの違いを徹底比較します。
費用相場やメリット・デメリットを理解して、あなたの会社に最適な資金調達方法を見つけていきましょう。
ファクタリングとは
まず基本から確認しておきましょう。
ファクタリングとは、企業が保有する売掛金(売掛債権)を、支払期日よりも前に現金化するサービスです。
銀行融資と違って返済義務はなく、売掛金という「将来入金される予定のお金」を早めに手に入れる仕組みです。
その代わり、手数料として一定の金額が差し引かれます。
例えば、100万円の売掛金があり、支払いまであと2ヶ月ある場合。
ファクタリングを利用すれば、手数料を差し引いた金額(例えば90万円)を今すぐ受け取れます。
その後、取引先からの支払いはファクタリング会社が受け取る——というのが基本的な流れです。
さて、このファクタリングには、大きく分けて「2社間」と「3社間」の2種類があります。
これらの違いを詳しく見ていきましょう。
2社間ファクタリングとは
2社間ファクタリングの仕組み
2社間ファクタリングとは、あなたの会社(債権者)とファクタリング会社だけで完結する取引です。取引先(債務者・売掛先)には知らせずに売掛金を現金化できる点が最大の特徴です。
💡 ワンポイントアドバイス
2社間ファクタリングは「取引先に内緒で資金調達したい」「取引先との関係が悪化するリスクを避けたい」というニーズに応えるサービスです。
取引の流れは次のようになります。
- あなたの会社がファクタリング会社に売掛金を譲渡
- ファクタリング会社が手数料を差し引いた金額をあなたの会社に支払う
- 支払期日に取引先から売掛金があなたの会社に入金される
- あなたの会社は受け取った売掛金をファクタリング会社に支払う

この方式の最大のポイントは、取引先を介さずにすべての手続きが完了することです。取引先は、あなたがファクタリングを利用したことを知らないまま、通常通り支払いを行います。
実際にコンサルティング時代、小売業のA社では、重要取引先との関係悪化を避けるため2社間ファクタリングを活用し、資金繰りの改善に成功していました。
2社間ファクタリングのメリット・デメリット
メリット
- 取引先に知られずに利用できる
取引先に資金繰りに困っているという印象を与えたくない場合や、債権譲渡を知られたくない場合に適しています。
- 手続きが比較的迅速
取引先の承諾取得が不要なため、審査さえ通れば最短で即日~数日以内に資金化できます。実務経験上、緊急の資金需要に対応できるケースが多いです。
- 審査基準が柔軟な場合も
ファクタリング会社によっては、取引先の信用力さえ高ければ、あなたの会社の財務状況がやや厳しくても契約できることがあります。
デメリット
- 手数料が高め
2社間ファクタリングの手数料は、一般的に8~18%程度と高めに設定されています。これは、ファクタリング会社にとって売掛先が支払わないリスクを負うためです。
- 債権譲渡登記が必要になるケース
ファクタリング会社がリスクヘッジのために、債権譲渡登記を求めるケースがあります。その場合、登記費用(5~10万円程度)が別途発生する可能性があります。
- 利用できる業者が限られる
大手金融機関は2社間ファクタリングをあまり提供していないため、比較的小規模なファクタリング専門業者が中心となります。
私がコンサルティング時代に見た失敗事例では、毎月のように2社間ファクタリングを利用し続けた製造業B社が、手数料負担の積み重ねで経営を圧迫してしまったケースがありました。
緊急時の一時的な利用を心がけるべきでしょう。
3社間ファクタリングとは
3社間ファクタリングの仕組み
3社間ファクタリングは、あなたの会社、取引先、ファクタリング会社の3者で契約を結ぶ形式です。
取引先にも債権譲渡の通知・承諾を得て進めるのが特徴です。
取引の流れは次のようになります。
- あなたの会社が取引先に「債権をファクタリング会社に譲渡する」旨を通知し、承諾を得る
- あなたの会社がファクタリング会社に売掛金を譲渡
- ファクタリング会社が手数料を差し引いた金額をあなたの会社に支払う
- 支払期日に取引先は直接ファクタリング会社に売掛金を支払う



この方式では、支払いが取引先から直接ファクタリング会社に行われるため、回収リスクが大幅に軽減されます。そのため、ファクタリング会社は比較的低い手数料で契約が可能となります。
3社間ファクタリングのメリット・デメリット
メリット
- 手数料が比較的安い
3社間ファクタリングの手数料は、一般的に1~9%程度と2社間より低めです。これは、ファクタリング会社のリスクが低減されるためです。
- 高額な売掛金でも契約しやすい
売掛先の信用力を直接利用できるため、規模の大きな売掛債権でも契約が成立しやすい傾向があります。コンサル時代の経験では、中堅企業C社が大手企業向け売掛金1億円超を3社間ファクタリングで資金化した事例も見てきました。
- 銀行系など大手金融機関も提供している
信頼性の高い大手金融機関のサービスも選択肢に入るため、安心感があります。
デメリット
- 取引先の承諾が必要
最大のハードルは、取引先に協力を求める必要がある点です。自社の資金繰り状況を開示することになるため、取引先との関係性が良好でないと難しい場合もあります。
- 手続きに時間がかかる
取引先の承諾取得や社内決裁などの手続きに時間がかかり、通常3日~2週間程度を要します。急ぎの資金調達には不向きな場合もあります。
- 取引先の承諾が得られない可能性
取引先の社内規定で債権譲渡に応じられないケースや、そもそも承諾を拒否されるリスクもあります。
私がコンサルティングした建設業D社では、親会社(大手ゼネコン)の理解を得て3社間ファクタリングを導入し、手数料3%という好条件で資金調達に成功しました。重要なのは取引先との関係性の良さです。
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの徹底比較
比較1:手数料・費用相場
ファクタリングを選ぶ上で重要なポイントとなるのが、手数料です。実際の相場を見てみましょう。
契約形態 | 手数料相場 | 登記費用 | その他費用 |
---|---|---|---|
2社間 | 8~18% | 5~10万円(必要な場合) | 事務手数料(業者による) |
3社間 | 1~9% | 原則不要 | 事務手数料(業者による) |
手数料の差は、リスクの違いに起因します。
3社間では取引先が直接ファクタリング会社に支払うためリスクが低い一方、2社間では一度あなたの会社を経由するため、追加のリスクが生じます。
例えば、100万円の売掛金をファクタリングする場合:
- 2社間(手数料15%):85万円を受け取る
- 3社間(手数料5%):95万円を受け取る
この差額10万円は、特に利益率の低いビジネスでは大きな影響を及ぼします。
⚠️ 注意事項
手数料率は、売掛先の信用力、売掛金額、支払期日までの期間などによって大きく変動します。複数の業者から見積もりを取ることをお勧めします。
比較2:契約スピードと手続き
資金化までのスピードも、どちらを選ぶかの重要な判断材料です。
2社間ファクタリング
- 最短即日~3営業日で資金化可能
- 必要書類:売掛金の証明書類(請求書など)、決算書、登記簿謄本など
- 取引先への通知・承諾は不要
3社間ファクタリング
- 3営業日~2週間程度が一般的
- 必要書類:2社間と同様の書類に加え、取引先への通知書・承諾書
- 取引先の内部手続きに時間がかかるケースも



特に緊急の資金需要がある場合は、2社間ファクタリングが適しています。コンサル時代、倒産寸前だった小売業E社は2社間ファクタリングで即日1,000万円を調達し、危機を乗り切りました。
一方、計画的に資金繰りを改善したい場合は、手数料の安い3社間ファクタリングが有利です。
比較3:リスクと注意点
それぞれの契約形態には、異なるリスクがあります。
2社間ファクタリングのリスク
- 手数料負担による収益圧迫
- 取引先からの入金をファクタリング会社に送金し忘れるリスク(契約違反になります)
- 債権譲渡登記による公示のリスク(取引先に知られる可能性)
3社間ファクタリングのリスク
- 取引先に資金繰りの苦しさを知られるリスク
- 取引先が承諾しない可能性
- 支払先変更に関する手続きミスのリスク
いずれのケースでも、契約内容を十分理解することが最も重要です。
特に2社間ファクタリングでは、売掛先からの入金を確実にファクタリング会社へ送金する体制を社内で整えておく必要があります。
私が経験した失敗例の中には、2社間ファクタリングを利用したにもかかわらず、売掛金入金後に資金を他の用途に使ってしまい、ファクタリング会社との契約違反で大きなトラブルになったケースもありました。
ファクタリングを導入する際のポイント
ポイント1:信頼できるファクタリング会社の選び方
質の高いファクタリング会社を選ぶための6つのチェックポイントをご紹介します。
□ 実績と設立年数:長期間の営業実績があるか
□ 手数料の透明性:初めから明確な手数料率を開示しているか
□ 口コミや評判:ネット上の評判や業界での評価はどうか
☑️ 法的な位置づけ:貸金業登録があるか(ファクタリング自体に登録義務はないが参考になる)
□ 顧客サポート:疑問点に丁寧に回答してくれるか
□ 契約内容:ノンリコース取引(償還請求権なし)か確認
コンサルタント時代、法外な手数料を請求する業者や、契約条件を明確にしない悪質業者も見てきました。最低でも3社以上から見積もりを取ることをお勧めします。
ポイント2:契約時に確認すべき項目
契約を結ぶ前に、以下の項目を必ず確認しましょう。
- 手数料の計算方法
- パーセンテージだけでなく、実際の金額を確認
- 追加手数料(事務手数料等)の有無
- 入金タイミング
- いつ資金が振り込まれるのか
- 分割払いの場合はそのスケジュール
- 契約の解除条件
- キャンセル時のペナルティの有無
- 特約事項の確認
- ノンリコース取引か否か
- 償還請求権の有無(取引先が支払えない場合の責任所在)
- 契約書の表現が明確か
契約書の「償還請求権なし」の条項は非常に重要です。これがない場合、実質的には貸金取引となり、法的リスクが生じる可能性があります。
実務では、ファクタリング会社に対して「リスク分担はどうなっているのか」を直接質問することもお勧めします。明確な回答が得られない場合は、別の業者を検討した方が安全です。
よくある質問(FAQ)
Q: ファクタリングを利用する際、保証人や担保は必要ですか?
A: 基本的にファクタリングは売掛債権自体を譲渡する取引のため、保証人や担保は不要です。ただし、信用力に懸念がある場合や、特に2社間ファクタリングでは、追加の保証を求められるケースもあります。契約前に条件を確認しましょう。
コンサルティング経験上、債権譲渡登記を行うケースが最も多く、個人保証を求められるケースは稀でした。
Q: 2社間ファクタリングを利用すると、取引先に知られてしまう可能性はありますか?
A: 原則として取引先に通知せずに契約できますが、以下のケースでは知られる可能性があります。
- 債権譲渡登記を行った場合(登記は公示情報のため)
- 取引先が何らかの理由で調査した場合
- 売掛先への支払い確認の連絡がある場合(一部の業者で実施)
完全な秘匿性を重視する場合は、契約前にファクタリング会社の対応方針を確認しておくべきです。
Q: 手数料はどのように算出されるのですか?
A: 手数料は主に以下の要素で決まります。
- 売掛先の信用力:大手企業や公的機関ほど低率
- 債権金額:一般的に高額なほど手数料率は下がる傾向
- 支払期日までの期間:期間が長いほど高くなる
- あなたの会社の財務状況:財務健全性も影響
- 取引実績:継続的な利用で優遇されることも
手数料10%と聞くと高く感じるかもしれませんが、年利換算ではない点に注意が必要です。例えば、支払期日が2ヶ月先の債権で手数料10%なら、実質年率は約60%に相当します。
Q: 3社間ファクタリングで取引先が契約を断った場合はどうなりますか?
A: 取引先の承諾が得られない場合、3社間契約は成立しません。その際の選択肢は、
- 2社間ファクタリングへの切り替えを検討
- 別の売掛先の債権でファクタリングを試みる
- 代替の資金調達手段(銀行融資、ビジネスローンなど)を検討
取引先へのアプローチ方法としては、「キャッシュフロー改善のため」と前向きな理由を伝えるのが効果的です。
Q: ファクタリングと銀行融資はどちらを優先すべきですか?
A: それぞれの特徴を比較すると、
項目 | ファクタリング | 銀行融資 |
---|---|---|
審査基準 | 売掛先の信用力中心 | 自社の財務状況中心 |
資金化スピード | 即日~2週間 | 数週間~数ヶ月 |
コスト | 手数料5~15%程度 | 年利1~5%程度 |
返済義務 | なし(債権譲渡) | あり(借入) |



基本的には、銀行融資が組める場合は融資を優先し、「急ぎの資金が必要」「融資審査が通らない」「追加借入を避けたい」といった場合にファクタリングを検討するのが一般的です。
実務では、両者を組み合わせる「ハイブリッド戦略」が効果的なケースも多いです。例えば、短期の運転資金はファクタリング、設備投資資金は銀行融資というように使い分けると良いでしょう。
まとめ
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングは、どちらも中小企業や個人事業主の資金繰り改善に役立つ手段ですが、それぞれに明確な特徴があります。
- 2社間ファクタリングは、取引先に知られることなく迅速に資金調達できる反面、手数料が高めになります。緊急性の高い資金需要や、取引先との関係を考慮すべき場合に適しています。
- 3社間ファクタリングは、取引先の承諾が必要ですが、手数料が比較的安く抑えられます。計画的な資金調達や、取引先と良好な関係を築いている場合に有効です。
どちらを選ぶかは、あなたの会社の状況や優先事項によって異なります。
スピード重視なら2社間、コスト重視なら3社間というのが基本的な選択肢ですが、それ以外にも取引先との関係性や自社の財務状況を総合的に判断する必要があります。
重要なのは、信頼できるファクタリング会社を選ぶことと、契約内容を十分理解することです。手数料の透明性や、償還請求権の有無など、細部にまで注意を払いましょう。
ファクタリングは、適切に活用すれば強力な資金調達手段となりますが、依存しすぎると本質的な財務改善から目を背けることになりかねません。
あくまでも一時的な資金繰り改善の手段として、賢く利用することをお勧めします。